醤油発祥の地・湯浅に息づく「始まりの醤油」
日本の醤油文化が生まれた地、和歌山県湯浅町。その中心で一八〇余年にわたり木桶醸造を守り続けてきた老舗 角長 が、鎌倉・室町期の家庭用醤油の製法を現代に再現したのが「濁り醤」です。完成までに要する歳月は約十年。圧搾も火入れも行わず、時間と微生物の営みにすべてを委ねるその姿は、まさに“醤油の原型”。湯浅という土地の記憶そのものを映す一本です。
諸味から滴る、選ばれし「上澄み」だけを瓶に
一般的な醤油が諸味を搾り、加熱して仕上げられるのに対し、濁り醤は一切の圧を加えません。吉野杉の大桶で二年以上熟成させた諸味から、自然に浮かび上がる上澄みのみを、静かに集めて瓶詰めします。麹の酵素が生きたまま残るため、立ち上がる香りは力強く、旨味は濃密で奥行きに満ちています。一滴垂らすだけで、料理の輪郭が研ぎ澄まされます。
加熱も加水もしない、一生寄り添う調味料
原料は創業当時と変わらぬ国産大豆と小麦、そして塩のみ。余計なものを加えず、余計な工程も施さない。その徹底した姿勢が、確かな存在感を生み出しています。刺身、豆腐、あるいは白米に。濁り醤は主張するのではなく、素材の本質を静かに引き上げる名脇役です。流行に左右されず、人生に寄り添う調味料として、長く手元に置きたい一本です。
